Purity〜忘れかけていた物語〜 第二話
5月6日(金)
ジリリリリリリ……!!!
翔夜「ん〜……眠ぃ…」
俺は聞きなれた目覚ましを止め、目も覚めきらないまま、朝食の仕度を整える。
と、言ってもパンを焼いて昨日の晩作った味噌汁を飲んで、ハムをそのまま出して食べるだけだが(ちなみに昨日はご飯だった)
とりあえず、食事をとっていると目は覚めるもんで、簡単な朝食を終えると着替える。
着替え終わり、学校に向かう。
外はカラリと……
晴れずに怪しい雲行きだった
翔夜「休み明けからいきなり雨かよ……」
翔夜は傘(1500円(税込み)で買った)を差して学校へ向かう。
雨だったせいか、いつもより1,2分遅れた
教室に辿り着いた俺はいつも通り友人に挨拶を交わす。
康祐「なぁ、翔夜」
声をかけてきたのは俺の友人の一人、箕田康祐。
親しい仲ではあるが、ちょっとうるさい時が多い。ちなみにどうでもいいことを知っている事が多く、どうでもいい話でよく盛り上がったりもしている。
翔夜「何だ?」
康祐は少し嬉しそうにして答える
康祐「今日、転校生が来るらしいぞ!」
翔夜「そうか。」
一々騒ぎ立てるほどの事じゃない、と思った俺はさらりと流す(実際には少し気になったが)
康祐「しかも、女子らしいぞ!」
翔夜「そりゃ、結構な事で」と、また流す。
と同時に昨日ぶつかった少女を思い出す。
翔夜(あぁ、あの娘かも知れないな…)
康祐がつまらなそうに
康祐「お前、おもしろくないやつだなぁ〜…」
余計なお世話だ。大体転校生で騒げば面白いのか?(昨日あったせいで興味も若干薄れている)
予鈴が鳴その2分くらい経ってから担任の濱野が来た。
転校生せいだろうが、めずらしく担任の方に視線が集まる
それを察してか、以前から知っていたのか担任は「皆知っていたとは思いますが…」で言葉を始めた
濱野「転校生が来ます。このクラスに」
クラスに一瞬のざわめきが起こり、担任が転校生に中に入るように指示した。
入ってきたのは、昨日会った少女だった。
黒っぽい髪に若干茶色が濃い目の瞳。スタイルも悪い方ではない。
昨日転んだせいか、新品の制服には少ししわがあった。
緊張のためか、頬は少し赤く染まっていた
冴「樋野冴です。え〜と、よろしくお願いします…」
濱野「はい。そういうわけで樋野さんの席はそこ。」
そういうと、俺のとなりにいつのまにかセットされた机をさす。
冴「ぁ、はい…」
翔夜(俺の隣り?)
彼女は俺の隣り、窓側の席につき、荷物を下ろす。
若干のざわめきを残したまま授業が始まる。
実際に俺は転校生にどんなヤツが来てもいいと思ってたし、興味も濃くは無い。
いつも通りに授業を受けた(いつも通りが真面目とは限らない)
睡魔が強力になってきた頃、丁度4時間目が終わる。
翔夜「は〜…やっと終わったか」
俺は親友の箕田康祐(さっきのやつ)・春河愁斗・猪瀬琴美、琴美の親友の宮乃奈美を学食に誘った(奈美は琴美が誘ったが)
学食は思いのほか空いていた。
多分、早めにきたことが功を奏したのだろう。
ただ、急がないと混んでしまうのでさっさとメニューを決めて、各自注文した。(ちなみに、俺と愁斗はラーメン、康祐はカレーうどん、琴美は天ぷらそば、奈美はカレーライスだった)
とりあえず、食事が始まり、そして終わる(速いなんて野暮なつっこみはなしの方向で)
皆より、少し早めに食べ終えた俺は先に教室に戻った
教室では、まばらに弁当を食べる人、購買のパンなどを食べるやつもいた。
もちろん、教室にいるやつだけがパンや弁当やおにぎり、というわけではないが。(屋上・廊下・中庭など、どこで食べてもいい)
とりあえず、自分の席につこうとすると、隣りに新しい机で転校してきた冴が弁当を食べていた。
実際に弁当なんてものは、学食のあるこの学校に入学してからほとんど作る事も無かったので、ちょっとのぞいてみた。
一つは一面ご飯がしきつめられた弁当箱(ある程度食べられてはいるが)
もう一つはおかずの箱でウィンナー、タコさんウィンナー(何故普通のウィンナーとタコさんウィンナーの2つが入っているかは謎)、野菜炒め、それに……
翔夜「ぽ、ポテチ?!」
思わず声をあげてしまった。しかし、そこにあるのは間違いなくポテチ(正式名称ポテトチップス)
その声に若干名が振り返る
冴「どうかしました?」
翔夜「あ、いや、ポテチ…だよね?」
冴「えぇ、いります?」
そういってポテチを差し出す。
翔夜「いや、そうじゃなくて……」
冴「珍しいですか?」
俺は少し控えめに頷く
冴「そうですか。でも、美味しいんですよ?」
翔夜「そ、そうなの…?」
冴「はいっ」
嬉しそうに答える冴
冴「ところで、あなた、昨日お会いしましたよね?」
翔夜「そぅ。大槻翔夜。改めてよろしく。」
冴「よろしくお願いします、翔夜さん。私は樋野冴です。冴って呼んでください。」
翔夜「了解です、冴さん」
とりあえず、挨拶を交わして、時計を見る。
翔夜「あ、あと5分で昼休み終わるから、急いだ方がいいよ」
冴「え?あぁはいっ!」
そういって慌てて食べ始める冴(いきなり喉を詰まらせる)
翔夜「だ、大丈夫」
冴「うぐっ、うぐぐぐぐ……はぁ…大丈夫ですぅ…」
翔夜「そんなに慌てなくても大丈夫だから。」
冴「はぃぃ」
そういって、席を立ち、教室を出る。
とりあえず、意味のない散歩だ。
いや、ただの暇つぶしか…
とりあえず、そうしているうちにあっというまに昼休みの終わりを告げる鐘が鳴った。
翔夜「ふぁ〜ぁ…」
俺が大あくびしたのと、HRが終わったのはほぼ同時。
やっと今日の学校が終わり、帰宅することになる。
暇な俺は誰かを誘って帰ることにする。
しかし、愁斗、琴美、奈美は部活。と、なると残りは康祐だ。
翔夜「おい、康祐」
肩の上に手を乗せ、声をかける
康祐「何だ?」
康祐が振り返る。
翔夜「なぁ、一緒に帰らんか?」
康祐「悪い、今日は先約があるんだ」
翔夜「そうか。じゃぁな」
康祐「おぅ!」
康祐は最前列の眼鏡をかけた男子に声をかけ、一緒に出て行った。
翔夜「………本っ当に今日は暇だな…」
外は出校してきたときがまるで嘘のような日本晴れ。
俺はまだ少し湿っている傘を持って、家路につく。
翔夜「今日の夕飯は蕎麦にでもするかな…」
と独り言をいいながら歩いていると……
??「あっ!」
前を歩いていた湖ノ瀬高校の女子制服を着た少女が目の前で(何もないところで)転んだ
俺はとりあえず、声をかけてやった
翔夜「大丈夫ですか?」
冴「ぁ、はい。ありがとうございます…って、翔夜君か」
翔夜「悪かったな、俺で」
冴「いや、そういうわけじゃなくて…」
翔夜「わかってるよ」
俺は軽く笑いながら答えた
冴は立ち上がって、埃を払う
冴「あ〜ぁ…まだ新しいのに、2度も転んじゃった…」
冴はそう呟いた
翔夜「気をつけろよ」
冴「うん」
それから、一緒に帰った。
誤解するなよ。家が同じ方向だったからだ。
俺と冴は雑談をしながら自分の家へ向かう。
しかし、その話ももう終わりだ。俺の家が見えてきたからな。と、冴が足を止めた。
冴「あ、私の家、ここだから。」
翔夜「そう。じゃ…」
冴「またね〜」
冴が自分の家だと言って、入った家は、俺の家のわずか3軒隣り。
道理で見かけたことがあるような気がしたわけだ。
とりあえず、俺は家で自由時間を全うし、晩飯に山菜蕎麦を食べ、目覚ましをセットする
翔夜「明日は、土曜日、4時間だったな…
買い物にでも、出かけるか……」
独り言をぼやいているうちに、いつのまにかベッドで寝ていた。