季節はもう6月。梅雨入りも近い、何となくじめじめした季節だ。ふと外を見ると小雨がしとしとと降っている。俺もこの柏崎学園に転校してから既に一週間が過ぎた。友達も徐々に出来て、学校にもなじんできている。「おい零司、涼、とっとと帰ろうぜ!見つかる前に早く!」隼人だ。この前転校してきてすぐに質問したお調子者。ま、そのおかげで一番早く仲良くなった。「あっ!隼人ー!あんた掃除当番でしょ?サボんないでやっていきなさい!!」この声は委員長だろうな、ここまで真面目だと感服する。「まったく・・・俺がいないと掃除も出来んのか?だらしないな〜ホント」「何・で・す・って〜!?そういう問題じゃないでしょ!!」二人のやりとりを聞きながら、俺はずっと外を眺めていた。 第四章〜友達〜 さっきより幾分か小降りになってきた雨はもうすぐ止みそうだ。教室で雨が止むのを待っていたクラスメイト達も帰る用意をし始めた。そんな中俺は未だに外を眺めていた。「お主、今日はどうした?いつもの元気がないな」「ん?あぁ、ちょっとな・・・」懐かしい顔、思い出が頭をよぎっていく。みんなに何も言わずに出てきた。父さん、母さん、友達・・・そして、奈々。色んな物事が頭の中で浮かんでは消え、消えては浮かんで・・・どうかしてたんだろうな、俺は。たかが17の少年が家出、行く当てもなくさまよった挙句、従兄弟の家で世話になっている。結局は親の世話になっているのと同然だ。「ホームシックになるのも仕方がなかろうが、此処に来たのも自分で決めた事なのだろう?だったら仕方がないと思うが」「あぁ。分かってる、そうなんだよな・・・」励ましか、皮肉か。ねぎらいか、軽蔑か。そんな一言。今の俺には何故か暖かい、そんな一言。「・・・ったく、掃除終わったよ。帰るぞ零司、涼」掃除が終わった隼人の声が響く。いつの間にか雨もやんで、外には虹がかかっていた。虹か・・・見るのも久しぶりだ。「おし!じゃあ行くか」「承知」こうして俺達は歩き出した。 相変らず外は曇っているが、雲の隙間から光が差し込んでいる。もうすぐ晴れるかな、晴れるといいな。「・・・でな、数学担当の堀に怒鳴られて散々でさ〜、零司聞いてんのか?」「ん?悪い悪い、ボーっとしてた。何の話だっけ?」「おいおい・・・」涼はあからさまに不機嫌そうな態度を取る。こいつを見ていると、表情がコロコロ変わって飽きない。いつものように、そのうち機嫌も直るだろう。「喋ってたら喉渇いた〜。どっかで休んでいかねーか?」「フン。お主、今日は銭は持っておるのか?今日は貸さんぞ」「うっ、零司様〜」「しゃーない。俺のおごりだ。じゃあ『tearoom』でいいか?」「あっしは何処へでもお供しますぜ、兄貴♪」このお調子者・・・。「『tearoom』・・・確か、沙希さんの?」「ああ、バイト先だ。少しくらいおまけしてもらえるだろ。んじゃ〜行くか。・・・って沙希の話をすると、涼って何か変わるよな?気のせいか?」「なっ・・・!気のせいだ、気のせい!」涼は照れを隠すかのように先頭を切って歩き出した。
新年が明けてしまいました。とりあえずあけおめ。マジで今年は頑張ろうと思っております故、何卒ヨロっす。んじゃ次回に〜b