何処までも続く広い海。
すがすがしい海風。
天候は快晴で、順風満帆。
その中を、
1つの小さな船が走っていた。「あれが・・・高天原島?」
そう言って甲板に出る少年。
どこか不安げだが、その顔はこの島での生活への期待からか笑顔があふれていた。
「もう少しで着くから、あんちゃんもうちょっと待っててな。」
何処からとも無くそんな声が。
この船の船長だろうか。
少年は何気なく島を見回してみる。
大きさは、そうだな・・・硫黄島ほどだろうか。
漁業をやっている漁師、釣りをしているおじいさん、浜で遊んでいる子供たち、テトラポットの上で話をしているカップル・・・。
なかなかのどかで、楽しそうなところである。
「いい所だな。ここなら楽しい思い出が残せそうだ。」
そう言って少年は、上陸の準備のために荷物の所へ戻って行った。
今日から此処での新しい生活が始まるのだ・・・
第一章〜始まり〜
・・・歩きつづけて、いつの間にか時刻は午後三時。日も傾きかけてきた。
「ここが『日向医院』?何とかここまで来れたな・・・方向音痴バンザイ」
さっきの少年は『日向医院』と呼ばれる病院の前に立っていた。
「あれ?零司じゃない!?こんなところで何してんの!?」
1人の少女が建物の影からひょっこり顔を出した。
「おぉ!?なんだ・・・沙希か。叔父さんと叔母さん、いるかな?」
この少年の発言からすると、従兄弟なのだろう。
「父さんと母さん?中にいると思うけど・・・ってか、何でここにあんたがいるのよ?」
「まぁ詳しくは中で話すから、とりあえず上がらせてくれないか?」
そう言って少年は少女と『日向医院』の中へ入っていった。
「・・・と、いう訳なんですよ叔父さん」
「う〜ん・・・」
時計は既に7時をさそうとしている。
気付けば2時間も家族会議が続いていた。
再会の驚きと喜びで溢れていた日向家も、今はしんと静まり返っている。
「・・・しょうがない。分かった。ここに住む事を許可しよう!」
その一言で少年の顔は笑顔でいっぱいになった。
「本当ッスか!?やった!!」
「えーっ!?チョット母さん、何か言ってよ!!」
さっきの少女は不満げに、夕食の準備をする母の方に目をやる。
「お父さんがいいなら、私はいいわよ。部屋も1つ余ってるし、子供が1人増えたみたいだし♪」
少女の母親は軽くそう答えた。
「え〜・・・そんな簡単な問題じゃないでしょ!?」
そう少女が言うと、打って変わって母親は真剣な眼差しとなった。
「大丈夫。何かあってもここは病院だし、本土ともほとんど離れてないんだから。」
「うん・・・」
この沙希という少女も渋々納得したようである。
「では!」
少年が立ち上がる。
「この天渡零司!ここでお世話になります!宜しく!!」
少年改め、零司は元気に挨拶した。